韓国と日本の「リベサヨ」の類似性 |
公務員は好待遇だとか、公務員は安泰だとか、そんな不可解なバッシングにあふれている。だが言わずと知れたことだが、公務員はまず「労働者」なのだ。労働者の権利が保障されていたり、雇用が守られているのなら、左派としては歓迎して当然のはずである。それなのに右派のみならず左派からもなぜ公務員バッシングがこうも激しいのか?
私が想像するに、日本では「公務員=政府」という見方が強いからではないかと思う。
思えば高度成長期、いや低成長に入った1970年代後半においてさえ、政権党の自民党は地元業者への利権構造を守り続けた。要するに公共事業で地元に税金を還元し続けたわけである。共助の精神と言えば聞こえはいいが、山口二郎氏によるとこれは「会員制の再配分」であると定義される。
つまり55年体制とよばれる自民党の一党支配を支えてきたのは、この「会員制の再配分」と言えるわけだ。これは左派からすれば面白くないことである。よって「再配分」という言葉自体に嫌悪感を持つに至った経緯がなんとなく理解できるのだ。
そこでお隣の国・韓国を見てみよう。韓国は日本にまして強烈な新自由主義社会である。
日本よりも小さな政府であり、公務員の数も少ない。おそらくアジア主要国で公務員の人口比を比べれば韓国と日本で少ない方のトップを争うだろう。
長年、韓国は開発独裁によって発展してきた。その中にはかなりの流血事件も多かった。光州事件のような容赦のない反対派への弾圧行為を見るにつけ、
「政府はすべてを持っている。民間は何も持たない」
これは韓国の社会で言われてきた文言である。
そして韓国は長い独裁政治から解放され、民主化された。民主化の旗手とされたのは金大中氏である。韓国政府から政敵とされ弾圧を受けてきた金大中氏はついに政権トップの座にまで登りつめた。だがその金大中政権の経済政策は新自由主義政策・ネオリベなのである。
政府からの独立、官僚からの解放、こうした言葉が、長い間「官」によって苦しめられた韓国には新鮮に感じられたのだろう。韓国は世襲意識の強い国である。セウォル号事件などで、財閥支配に「韓国社会とはあんなものなのか」と思った方も多かろう。こうした事件がまた韓国社会をさらにネオリベ化させる可能性はある。
日本の話に戻ろう。
長年自民党は日本を支配してきた。その最大の目玉商品が「地元への利益還元」だったことは確かだ。日本の左派は韓国ほど弾圧されてきたわけではないが、こうした「アメをばらまく」政策で政権党が人気をとり続けたことに反発を覚えるのはあり得る話である。
そこで現れたのが「左翼」でありながら、経済的極右であるネオリベを信奉する「リベサヨ」である。
「官は悪だ。よって民に移管されねばならない」
リベサヨとは労働政策研究者・濱口桂一郎氏の造語であるが「ネオリベラリズム左翼」のことだ。欧米などからすればまことに矛盾した言葉であるが、日本ではこうした一大勢力が存在するのだ。
きっかけに差があるとはいえ、政権党への不信感から生まれた徒花のような左翼であるとは言えるだろう。