「資生堂批判の批判」こそ有害な論だ |
資生堂は女性活躍推進に失敗したのか?(上)
時短はもはや時代遅れ。的外れな資生堂批判は止めよ
http://webronza.asahi.com/culture/articles/2015112600001.html?iref=comtop_fbox_d2_04
なぜ資生堂が批判されているか? そのことを理解せずに的外れな「批判への批判」を行っているのは勝部氏の方である。
勝部氏は「子育ては女性だけがするものではない」という方針から資生堂を擁護する。女性だけが子育ての責任を負う社会はおかしいが、それが今回の資生堂の姿勢を免罪するものにはまったくならない。
ことは男性・女性どちらが子育てをするかという問題ではない。資生堂社員の8割が女性によって構成されているということも問題ではない。
要は、子育てをしていない層からの不満に屈したことが問題なのだ。たとえ男性が子育てに参加していたとしても、時短を取ればそんなことは他の社員にはわからないことなので当然不満が出てくる。
勝部氏が言いたいのは概ねこんなところだろう。
「資生堂は女性が子育てをするものとして、時短を認めてきたが、男性だって子育てに参加してもいいじゃないか。それなら男性が時短できる企業に他が変わらなければならない」
前段は同意できるが、後段とは矛盾が生じる。
では男性が同じ立場だったとして、同じ男性社員から「あいつばかりずるい」という声が出てきたとして、それで時短を打ち切る方針にしたらどうなるのか?
つまりは負担の押し付け合いが起きるだけなのだ。その押し付け合いが資生堂で起きたから、資生堂だけに負担を強いるのは酷だとしても、真っ先に時短を否定する方向に舵を切るのは交通違反で捕まったときに「だってあいつだってまったく同じ違反してるじゃん」という理屈と同じなのだ。
資生堂は確かに時短廃止方向への理由付けとして「他の社員からの妬み」をあげているではないか。この醜い動機を持ってどうして擁護できるのか理解できない。私の職場では常に2人前後の産休育休を取得状態だが、別に不満などは出ない。私の職場が特殊なのか? ならばこうした職場の方が理想に近いと私は誇りを持って言う。
この件に関しては発想があまりに後ろ向きなのだ。「平等に助け合いましょう」ではなく「平等に苦しみましょう」という発想だから批判が巻き起こるというのに勝部氏はこうした反発の理由がまるで理解できていない。
しかも資生堂は「時短は甘え」とはっきり言い切っている。これもまったく容認できない発言のひとつだ。
労働組合の要求も、病気休暇も、育児休暇も、取る人に対して「甘え」という言葉を浴びせればすべて説明したような気になってしまう。だがこれは思考停止である。こんな理屈に同意する者が世間にこれほど多いとは想像もできなかった。
勝部氏をはじめ、擁護派はなぜかこうした資生堂の横柄な発言を自分で好意的に解釈変更をしているのだ。なぜそんなことをしたがるのか理解不能だ。よほどお人好しなのか。それとも世の中の逆張りをすれば目立つとでも思っているのか?
今回の資生堂ショックに関しては、経済関係の自称エコノミストやらマスコミ関係やらからはやたら擁護の発言が目立つ。WEBRONZAも朝日新聞の系列だ。言いたくはないが、広告料の問題もあり批判できないのではないかと邪推してしまう。とにかく経済界やマスコミがどちらの方向を向いているのか、それがよくわかる事例になったと思う。彼らの言う「労働者保護」など建前だけのまやかしだ。