小笠原空港は是か非か? |
「五輪を開催できる東京都が、どうして空港一つ造れないのか。五輪までになんとかしてくれ」
これは12月17日の朝日新聞の記事からの発言抜粋だが、自民党国会議員でつくる「小笠原を応援する会」でのかなり強硬な発言である。
なんでも「小笠原空港」はアメリカの占領から返還された1968年の20年後、1988年に記念事業として計画されたものらしい。あれから27年も経っているのになぜ一向に話が進まないのだ、という苛立ちがあるようだ。
自民党は旧来「会員制再分配型政治」と言われているように、主流は穏健な保守思想と地方への配慮という理念のもとで政治を仕切ってきた政党だ。今は極右的な安倍政権だが、本来は穏健政党なのである。
だから地方にも優しい。
この問題を「まーた自民党が地方に土建事業を持って帰る政治をしようとしている」というのは間違っている。なぜなら小笠原は人口3,000人に過ぎないからだ。たかだか選挙での数千票を目当てに小笠原を支援しているとは思えない。本当に票目当ての利権政治ならもっと大票田を優遇するだろう。
かと言って「はい、そうですか」と簡単に空港事業にかかるわけにもいかない。
まず資金の問題である。空港建設には1,000億円以上が必要とされる。確かに小笠原住民も納税者なのだから公共サービスの恩恵にあずかる権利は有している。しかしなにせ人口3,000人だ。頭割りとしても村民ひとりあたりの事業費は3,000万円にもなる。
仮に東京(本土)に直すとひとりあたり3,000万円の公共事業は400兆円の事業に匹敵するのだ。小笠原村民にも裕福な生活はおくってもらいたいが、なんせ費用対効果が悪すぎる。それにそんなことを言い出したら人口100人の離島にも空港を作れということになるし、人口100人の寒村にも新幹線を停めろという話に発展しかねない。
ただ小笠原よりも人口の少ない新島や神津島にも空港があることを考えると、ただ「人口が少ないためペイしない」という理屈では否定もできないようだ。それになんといっても小笠原は本土から遠すぎる。同じ人口3,000人でも、船でも比較的簡単に行ける新島や神津島と、船では丸一日以上もかかる小笠原では空港の優先度・重要度はむしろ小笠原のほうが高いだろう。
もうひとつの問題がある。小笠原は世界遺産である。この自然保護の観点からもやすやすとGOは出せない。
「そんなもの(絶滅危惧種のムニンツツジ)はあったってなくたってどうってことない。(建設が進まないのは)環境省にも責任がある。省から庁へ戻ってもらわねばならない」
ともはやここまでくると暴言の域である。
環境軽視の姿勢はいただけないが、税金をどこまでマイノリティにつぎ込むことが許されるのか? そうした疑問を「小笠原空港」は問うているようだ。