大学生という若者が女性を人間扱いしない衝撃 |
不動産学部の学生が「家族が仲良く暮らせる間取り」というテーマについて書いたものだが、それによると家庭の中心にリビングを置く。各部屋にはこのリビングを通るようにすれば家族の会話も進むというものだ。ここまではさほど問題があるとは思えない。
問題は次である。
『母の部屋を作らない。
リビングにだれもいないとなると、結局はだれとも会わないため、強いて母の部屋を作らずにリビングにいてもらいます(寝るときも)』
他の家族全員の部屋はそれぞれ独立して存在し、プライバシーを守るように配慮しているのだが、母親だけは部屋がない。しかも間取りを見るとリビングにはベッドすらない。どうやらこの大学生は母親をソファで寝かせるつもりらしい。
「お母さんを人柱にすることでかろうじて「家族ごっこ」は取り繕える間取り」「まさに犬だ。自分だったら気が狂いそう」「女中さんにさえ女中部屋があったのにと唖然とする他ありませんでした」
などなど猛烈な批判を浴びている。
この問題で私は2つの疑問を持った。まずこの案を取り上げた准教授の存在。これが猛反発を食らうことが予測すらできなかった人物が大学で教鞭をふるっているという驚き。そしてもうひとつが、大学生という若者がここまで女性を道具扱いする差別感を何の疑問もなく持っているということだった。
この1例だけをもって「若者の保守化、退行化」というのは乱暴なので、世論調査で見てみることにする。
2014年の内閣府の世論調査に「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考えか方にどの程度の人が賛成、または反対をしているのかというものがある。
ここでは男性に絞って見てみよう。するとこの考え方に賛成という率は20代43.0%、30代45.3%、40代40.1%、50代38.7%、60代50.2%、70代54.8%となっている。
もはや生きる屍のような70代が大きい数字なのは今更どうしようもないだろうが、20代男子が半数近くは「男は仕事、女は家」という旧態依然とした考えを持っていることに驚く。
この世論調査はサンプル数が各世代100~300程度しかないので、ちょっとした数字の偏りで変動がありそうだ。おそらく1~2%程度の違いは誤差のうちだが、現代型の男女同権社会の教育を受けてきたはずの若者が、男尊女卑感覚の強かった時代の世代と大差ないという事実にも衝撃を受けた。
つまりは日本の若者の女性を見る目は前世代からほとんど変わっていないのである。これを家庭や学校教育のせいにするか、あるいは社会全体がそういう空気であることに原因を求めるか、それは難しいところだが、私としてはあまりの若者の進歩のなさに少々幻滅したのは事実である。