普通すぎる人間が総理になると常識が通じなくなるらしい |
安倍晋三の祖父で、同じく右翼タカ派の政治家岸信介は東大法学部でもトップクラスの秀才だった。もうひとりの祖父・寛はリベラル系の政治家で、晋三とはまるで違うが、学歴はこちらもたいしたもので東大政治学科を、また父・晋太郎も東大法学部を卒業している。
学力というのはかなりの部分で遺伝の要素があるといわれる。おそらくは晋三も優秀な遺伝子を持って生まれてきたのだと思われるが、学生時代の同級生の話では「東大なんて無理、早慶も無理だっただろう」と語る。結局「中途半端に大学を選ぶなら成蹊へ」という理由で進学したのだそうだ。
ところが晋三には成蹊大時代の実績というか痕跡がまるでない。入学したのが嘘だという学歴詐称の話ではない。事実、成蹊大に通っているのに、その存在が空気のように希薄なのだ。
勉学でも特に目立った研究結果を残したわけでもなく、所属していたというアーチェリー部でも成績は記憶に残らないほどだった。
かといって悪童だったかというとそうでもない。何かにつけて普通。まったく特徴のない学生だったのだ。
晋三は79年に神戸製鋼所に入社する。だがそこでも見せたのは普通、あまりに普通すぎる姿だった。私は岸信介の思想とは相容れないが、そのエネルギッシュな魅力は認める。だが晋三にはそうした人間的な魅力が欠けているのだ。
古谷経衡氏が朝日のWEBRONZAで語ったところによると、「安倍首相の本を読んでも教養を感じない」「基礎教養が危ぶまれる」「70年談話は無難なところ」「無害とも言えます」と述べている。
概ね同感だが、無害というのがひっかかる。
「教養がない」からこそ、立憲主義の何たるかを理解できていないのではないか? 立憲主義を打ち捨てれば社会は人治主義になる。そうなれば権力者の思うがままに国を動かす独裁化が起きかねないのだ。これは安倍晋三がそう考えているというのではなく、権力者にそういうレールを敷いてしまうことへの危険である。安倍よりももっと危険な政治家が出てきたときに、暴走できる素地を作ってしまうことが危険なのだ。
それと安倍晋三のお坊ちゃまぶりに都合良く便乗するあまり、暴言・失言を繰り返す自民党議員のなんと多いことか! 権力者にその能力がないとき、政治家は虎の威を借る狐のごとく暴走する傾向があるらしい。サメの脳ミソと揶揄された森政権時代がそうだった。
首相が普通であると、その周囲が先鋭化する傾向がある。実は私は真に危険なのは安倍よりも総務相の高市や官房長官の菅ではないかと思っている。