これは裁判所の判決がおかしいだろう |
この施設は11年前に契約を交わしたが、試運転段階で基準以上の数十倍以上という大量の汚染物質が排出され、しかも溶融炉内にダストが堆積するといった数々のトラブルを引き起こしていた。
いわば完全な失敗工事の産物なのだが、裁判所はなぜか企業側の肩を持ち、市側に「和解協議に応じるように」と促したという。
これによる請求額は167億円、被害額は100億以上に達するという。控訴審でも勝てないとなれば解体費は市側が負担する羽目になるため、最悪、施設を放置し、廃墟のままにすることになることが考えられるという。
市議会は「厳しく責任を求め、責任を問う」との声が出ているが、これは文句を言う相手が間違っている。
仮にこれが個人の住宅に関する手抜き工事や、計画外の不具合が出た工事なら、当然業者側に責任を問うのが筋となる。もしこれで裁判所が業者側の言い分に丸乗りした判決を出せば、「なんだ、裁判所なんて強者の企業の茶坊主ではないか!」との批判が出てこよう。
ところが相手が行政となると、「税金の無駄遣い」という声が真っ先に出てくるのが奇妙だ。この話は誰がどう見ても、工事を請け負った住友重機のミスだからである。
加えて裁判所の言い分もおかしいのひと言に尽きる。
市側は契約解除の場合、解体費などを住友側が負担することで合意していると主張したが、裁判所は合意を認めず、「完成始動しなければ、社会経済上の損失が大きい」と溶融施設を完成させるよう求めてきたそうだ。
ちょっと待て。汚染物質が大量に排出される施設を、裁判所は「金がかかっているのだから無理にでも動かせ」と言っているのだ。住民の健康や環境をまったく考慮していないのは裁判所ということになる。
「不具合は住重の責に帰すべきと断定できない。同社の立案した対策工事を完了させれば一定の効果が得られる蓋然性は高かったのに、市は実施の機会を与えなかった」
こんな理屈が通るなら、どんな手抜き工事があっても、あとから「対策が必要」だとダダをこねれば済むことになる。当然、工事にあたって市側は住友重機に見積もりをさせたはずだ。その見積もり通りにいかなくなったのなら、それは住友重機側が解決すべき問題である。
報道はこうした事態になると行政の不手際を責め立てる。今回も明らかに住友側の言い分がおかしいのに報道は「行政=悪」的な姿勢に見える。
だがこのまま工事を続け、施設を稼動させれば余計な税負担を受けるのは市民であり、汚染物質を浴びせられるのも市民であることに報道はもっと敏感にならなくてはならない。