「投票に行く」となぜ人はうそをつくのか? |
それでは今回の投票率は87%にも達するのだろうか? 絶対といっていいが、そんな数字は出ない。
実はこの手の世論調査やアンケートを行うと、「投票に行く」と答える人の割合は、実際の投票率よりもはるかに高い数字を示すのだ。
たとえば毎日新聞の世論調査の例を挙げてみよう。
毎日新聞は今回の参院選の行動を聞いたところ、「必ず行く」「たぶん行く」と答えた人が92%にも達したそうである。本当にそんなに選挙に興味がある人ばかりなら日本人も捨てたものではないと思うのだが、実際にはそうはならない。
それを証明するのが前回選挙の際の結果だ。
毎日新聞が2013年の参院選時にまったく同じ調査をしたところ、「必ず行く」「たぶん行く」と答えた人は91%にも達していたのだ。それで実際の投票率はどうだったか? 52.61%である。
「行かない」と答えた人が実際には投票に行ったケースも少数ながらあるだろうから、そこを考えると、4割の人は「投票に行く」という嘘をついていたことになる。
これはどんな報道機関が行った調査でも同一の傾向を持つ。人は「投票に行くか行かないか?」という問いをされると、「投票に行く」と、その気はなくても答えてしまう性質を持っているのだ。
なぜこんな傾向が常に出てしまうのだろう?
確かに投票日に急用ができてしまう人もいるだろう。体調が悪くてやめる人もいるだろう。だが4割もの人がそんな状況下に置かれているとは思えない。明らかに行く気はないのに、行くと答えてしまう人が多いことは間違いないのだ。
これについての解析は難しいが、世論調査などで、かしこまって問われると、「カッコをつけてしまう」人が多いという面は否定できないだろう。心のどこかで「投票に行かないと答えることは恥ずかしい」という思いがあるのではないか?
不思議なことに、新聞の選挙予測というのはほとんど当たる。出口調査でもほぼ確実に当選者を当てることができる。これらについては有権者は嘘をつかないのだ。
世論も時に嘘をつく。そのことを考慮していないと、もっともらしい理由をつけた有権者の言い分が、実は何の意味もない空虚な言葉だった、という現象が続くことになる。