なぜ芸能人が政治に関わると叩かれるのだ? |
(石田氏は出馬を取りやめたので、一般人と同じく呼び捨てはやめ、氏名に「氏」をつけることとする)
だが石田氏をめぐる放送界や芸能界の動きは決して好意的なものとは言えなかった。
まず石田氏と思想的に相容れないフジテレビの安藤優子アナや田崎史郎時事通信特別解説委員らはバカにしたような口調だったという。
また日本の極右テレビ読売テレビの「情報ライブ ミヤネ屋」でも、青山和弘氏が「東京都政に思い入れがあるからという会見ではなかった」と否定的な見解を示したらしい。
人の心の中を思い計ることはできない。青山氏は何の根拠があって、石田氏の発言に「思い入れがない」と断じたのだろうか? 自分と違う政治信条の者を否定したいだけだったのではないか?
「国政の問題を都知事選に持ち込むな」というメディア側からの批判には、「じゃあ、石原慎太郎の時はどうだったのだ?」と問い返してやりたい。
さらに石田氏には番組の休止まで背負い込まされている。「シネマに乾杯」というABCテレビの番組だ。加えてCMの違約金の問題もあり得るという。CMをテレビ局の判断で差し替えると、その損害賠償を請求されるという話まである。
だが石田氏は芸能活動を投げ捨てていきなり都知事選に出たわけではない。「野党統一候補なら出馬してもいい」と言っただけなのだ。それなのに番組の休止とか、CMの打ち切りなど、やる方が頭がどうかしているのだ。
ここで海外を見ると、海外の芸能人は自らの政治的スタンスを明言する。
銃を撃ちまくってエイリアンを退治したシガニー・ウィーバーは「本当は私は銃規制を支持している。この役には非常に抵抗があった」と、映画の内容とまったく異なる自分の政治信条を発言したのだ。
これはもちろんリベラルばかりではない。銃犯罪多発のアメリカで、その元凶ともされる「全米ライフル協会」。このロビィ団体にも有名芸能人が多数、名を連ねている。
ショーン・ペンは過激な反捕鯨団体シーシェパード支持を明確にしているし、トム・ハンクスは民主党のオバマ支持を明言、逆にスタローンは熱心な共和党支持者だし、シュワルツェネッガーは共和党から知事にもなった。リチャード・ギア、ジョニー・デップ、ジュリア・ロバーツは民主党、ブルース・ウィリスは共和党支持と、海外の芸能界では自身の政治信条を明確にすることなどは普通なのである。
「芸能に政治を持ち込むな」というのは「フジロックに政治を持ち込むな」というのと同じくらい、世界から見たら頓珍漢でガラパゴスな発言なのである。
芸能人も「みんなから好かれよう」などと思わない方がいい。野党支持を表明しても、その背後には何千万という人が同じ信条を持っている。堂々と意思表示ができる芸能界になるべきなのである。