メダルを取れなくなったのは柔道にとって朗報 |
木村氏は右派の論陣として知られ、ニッポンニッポンを叫ぶのかと思いきや、このような冷めた見方をしているのには少し意外だったが、私は今回は木村氏の発言を支持する。
まず私も知らないことだったのだが、木村氏は「ブラジルの柔道人口は日本の10倍」と語ったそうである。
え、そうなのか?と調べてみたところ、これは事実だった。日本では柔道の競技人口は減少傾向にあるが、世界では柔道の愛好者は増え続けており、特にブラジルは世界一の柔道大国であり、その競技人口は200万人に達し、日本の12倍にもなるのだ。そしてさらに調べてみると日本よりフランス(56万人)、ドイツ(18万人)のほうが競技人口が多い。ロシアでも10万人、日本よりはるかに人口の少ないモンゴルでも10万人とある。
つまり日本がメダルが取れなくなってきてもそれは仕方のないことなのだ。
というか、もし日本しかメダルを取れない状態が続いているとしたら、柔道は世界に広まることはなかっただろう。逆に言えば日本がメダルを独占できなくなったということは、それだけ柔道が世界に広まったという証拠である。
また日本の柔道人口が減っているのに世界が増えているとしたら、その原因を考えねばならない。
海外はクールに柔道を格闘技系のスポーツとして扱っているが、日本は精神論に走りがちだ。その精神論が日本の若者世代を柔道から遠ざけているとしたら、日本柔道の成績低下は自業自得といえる。
そして海外ではどうも柔道による死亡事故というのがほとんどないらしいのである。たとえば日本の3倍以上の競技人口を持つフランス柔道は2005年以降の死者がゼロだという。
28年で120人もの死者を出している日本は、いつまでも先輩面をしたり、オリジナルだけが最高だとうぬぼれるより、こうした海外の安全への取り組みを見習うべきだろう。
ロンドン五輪で監督を務めた篠原信一氏は「敗けて銅メダルを取ったからといって『おめでとう』とは言えません」と言ったそうだが、もうそろそろ日本しかメダルを取ってはならないかのような、時代遅れな考え方を改める時だろう。サッカーも発祥地はイングランドとされているが、世界最強のサッカー地域は今ではイギリスではない。