マクロンは仏国民の消極的支持で当選したが… |
実はフランスの大統領選でも同じことがあった。新大統領エマニエル・マクロンもまた消極的支持によって選出されたのだ。
はっきり言うとマクロンは新自由主義者である。公務員の20万人削減や労働規制の緩和、国営企業の民営化などを提唱している。これではまるで小泉純一郎か竹中平蔵だ。
しかし社会民主主義の根強いフランスでなぜネオリベが大統領になったのか、それはいくつかの偶然が重なったからだ。
大統領選の一次投票ではマクロンは24%の票を得た。次いでルペンの21%。このふたりで決選投票となったのである。仏国民からすれば「コレラとチフスのどっちがいい?」と聞かれているようなものだ。
いくらなんでもルペンのように排外主義を全面に押し出す候補者は選べない。そのため渋々マクロンを選んだというのが実情だ。
だがマクロン以外の候補者はほとんどがEUとの距離を置きたがっていたのだ。その最たるものが極右のルペンであったが、極左のアモン前国民教育相に至るまで、右も左もグローバリズムに反旗を翻している候補が並んでいたのだ。その比率は70%を超える。
つまり仏国民の希望は反グローバリズムである。その代表として現れたのがルペンだったので仏国民はこれに票を投じなかっただけなのだ。
もし左派系の、移民に対して極度に排外的な姿勢を見せない反EU、反グローバリズム候補が立ったならおそらくマクロンは負けていただろう。
ここで考えるべきなのは、EUという存在が本当に市民のためになっているのかという視点である。
なるほど移民に対してヘイトをふり撒く存在は選びたくはない。だがEUにとどまることが国民生活の向上に繋がらないとしたら、その一点で大統領選を闘うとしたら、また結果は違ったものになったのだろうか。
そのマクロンの新党が圧勝した。だがこれをもって仏国民がネオリベを受け入れたとは言い難い。なにせ半数以上の有権者が棄権しているからだ。今フランスはポピュリズムとネオリベと反グローバルの中で方向性を見失っている。