再生可能エネルギーが自然破壊をする? |
簡単に言えば「自然」を利用したエネルギーであり、公害などは出さない、と単純に思い込んでしまっている人もいる。
だがこんな話を聞いたら、物事はそう簡単に進むものでもないことがわかるだろう。
今回話題にあげたいのは太陽光発電である。その中でも個人の家屋の屋上に着いている家庭用太陽光発電パネルではなく、もっと大規模事業として行っている太陽光事業のことだ。2012年から太陽光発電を一定期間電力を高い金額で買い取る制度が導入され、次々と太陽光発電パネルが作られていった。と同時に様々な問題も抱えるようになった。
最近、問題になっているのは山梨県北杜市の例だ。ここでは大規模太陽光発電の設置がなされており、その面積は昨年度で40haに達する。2011年の東日本大震災のあとから倍々ゲームで増え続け、今やその面積は3年前の10倍以上に達する勢いである。
再生可能エネルギーが環境破壊もなく、火力のように排ガスも出さず、原発のように放射能漏れの恐れや温排水の問題もなければ確かに良いだろう。だがこれらのエネルギーは「自然」という言葉の美しさとは裏腹に多くの自然を破壊し続けている。
北杜市の場合、太陽光パネルの設置は森林を伐採して行われているのだ。森林を破壊してまで自然を守ろうとする再生可能エネルギーとやらにどれほどの価値があるというのか? 完全に論理矛盾である。
北杜市ばかりではなく、太陽光パネルの設置による自然破壊と環境の悪化は全国いたるところで起き始めているのだ。
さすがにこれではまずいと思ったのか、自治体によっては条例で太陽光パネルの設置面積比率に制限を加えるケースも出てきた。
しかも太陽光パネルの脇には白骨を思わせる電柱が数えきれないほど林立し、景観を損ねるようになってきた。観光道路の脇に短い間隔で延々と続く電柱の列を見ると、この国は本当に都市・自然景観というものを考慮していないのだなと痛感する。
しかも森林を切り崩したことで厄介な問題も発生するようになった。大雨の際に、太陽光パネルの敷地から大量の土砂が流れ込み、付近の田畑を埋めるといった被害が生じるようになったのだ。森林の過剰伐採が土砂災害を招くということは常識なのに、設置の際に考慮されなかったのか?
このまま地球に負担をかけ続けるエネルギー生産を続けて良いわけがないのはわかる。だがだからといって猫も杓子も再生可能エネルギーに走り、その結果より環境に負荷をかけているようではどうしようもないだろう。自然を守るために始めた事業が、自然を壊すことになってはまさに本末転倒だからだ。
ここは自然エネルギー派も頭を柔軟にして、再生可能エネルギーであれども公害を引き起こす可能性を認識し、その対策を取った上で代替エネルギーとして開発を進めるべきだと思われる。