ニッポンの害人(1)-中川八洋 |
第1回目は中川八洋筑波大学名誉教授である。
「道徳の"教科"化を反対する者を"殺人教唆予備罪"で逮捕・可罰できる立法を!-道徳は、価値相対を超越する"絶対の法"」
のっけから危険極まりないカルト臭満載である。俺様の意見に逆らう者は存在すら許さない、逮捕して投獄しろ!
これが阿呆なネトウヨの妄言ならわざわざここに記載などしない。問題は中川が筑波大の名誉教授という公職に就いていることである。中川に言わせると現在学校教育で行われている道徳教育は「共産革命教育」であり、文部省もグルになった「赤色官庁」であるという。
まったく脳ミソにウジでもたかっているのか?と思わせるほどのカルトぶりであるが、筑波大は「個人の主義主張だから」ということで問題にするつもりもないらしい。大学の講師も玉石混淆とは思うが、よくまあこんな正常な思想から逸脱した人間を雇うものである。
道徳・倫理も価値観に属するものであるが、「強盗殺人」や「振り込め詐欺」が悪いことであるくらいの常識的な定義は誰でも持っている。筑波大は「俺の考えに従わない者は投獄する」という、常識的な定義からかけ離れた人物ですら受け入れるらしい。
中川に言わせると、当然、日本古来の道徳が絶対に正しいものであり、それ以外はすべて存在することすら認めないのだそうだ(一度イスラム国でその発言をしてきて欲しい)。
文科省は「考える道徳」というものを提唱している。つまり「これが正しい考え方だ」という価値観の押しつけをせず、自分たちでこんな道徳観・倫理観は社会にどんな影響をもたらすかを考えるのである。安倍政権のもと、文科省としてはまだマシな方針を打ち出したと思うが、文科省など「共産革命教育を行っているアカの官庁」と妄想を抱いてやまない中川には通じるはずもないだろう。
中川は当然のことだが道徳観・倫理観・価値観の相対主義を認めない。そういう社会は「法や法律のない社会」(原文ママ)「倫理道徳のない社会」「国王を殺害する社会」といきなり極論に暴走する。そしてヒトラーやスターリン、ポル・ポトなど、過去の独裁者は道徳の相対主義に端を発するなどと支離滅裂なことを言い出すのだ。多様な価値観から出てきた思想のひとつといいたいらしい。
だが考えてもみれば良い。ヒトラーやスターリンに価値観の相対主義などを説いたらどうなるか? またたく間に粛清されてしまうだろう。つまり中川の言う「道徳は価値相対を超越する"絶対の法"」という思想から生まれたのが過去のファシズムであり独裁なのだ。ファシズムとは「木を束ねる」ことである。つまりまったく多様な価値観や相対的な思想を持たせないところから始まる。中川の思想と実に親和性があるではないか。
中川にとって、自分の正しいと思う道徳の価値観は数学の正答のごとく唯一絶対のものだという。だがそんなことを科学者に尋ねれば100人が100人否定するだろう。
ポル・ポトは知識人こそ腐敗の元凶として粛清を行った。中川のような人間が権力を握ったら、まさにポル・ポトの大粛清と同じ、知識人から真っ先に消されていく悪夢のような世界になることは間違いない。
多様な価値観には寛容になるべきである。だが「不寛容」にだけは寛容になってはいけない。