2015年 08月 18日
「反戦映画」を述べるならバーホーベンを見習え |
アニメ監督の高畑勲氏が
「『火垂るの墓』は反戦映画ではない。あれは反戦にならない」
と主張している。
高畑氏の思想は宮崎駿監督に近く、左派寄りで反戦意識も強いのだが、なぜにこういう発言をしたのか? それは、戦争を可哀相なものに描いている、そのことこそ問題なのだという。
戦争の受けた傷が悲しい、というお涙頂戴映画では、権力者に、
「そういう目に遭わないために軍事力を増強する必要があるのだ」
と言わせてしまう。高畑氏はそう述べている。
ここで1997年のポール・バーホーベン監督作品「スターシップ・トゥルーパーズ」を題材にしたい。この映画は「宇宙の戦士」を原作にしたものであるが、戦争を徹底的に茶化している。そして戦争を徹底的に残酷に描いている。
舞台は未来の地球だ。昆虫型生命体「バグ」と星間戦争をしている設定になっている。
まずはこの地球の舞台設定がものすごい。完全なる軍事優先国家となっているのだ。そして社会の頂点に君臨するのは軍人ばかり、一般人は市民権すら与えられない。市民権が欲しければ「兵役」に就かなければならない。
個人の資質もあるが、まずは最前線の歩兵部隊に送られる。未来の世界で歩兵が必要か?という疑問はさておいて、敵の星でこの兵士達はバグと血みどろの戦闘を強要される。これがまたすさまじい。腕がちぎれ、首が飛び、身体が引き裂かれる残酷シーンがこれでもかとスクリーンに映し出されるのだ。
では若者達を戦場に送る社会がその後変わるか? いや、何も変わらない。それどころか無残としか言いようがない死屍累々たる戦闘を生き延びた主人公が英雄として祭りあげられラストを迎える。
そして映画では軍のCMが流される。入隊を勧誘するCMだ。そんな軍を賛美し、英雄を称え、そして無数の人が無残に殺される、そんな映画が「スターシップ・トゥルーパーズ」なのである。
公開当初、バーホーベンをよく知らない人達からは非難の声が上がった。
「なんて好戦的な映画」「こんな残酷な映画を公開するなんてどういう神経だ」「血の海で生き残ったから英雄だなんて酷すぎる」
だがこれこそが正しい見方なのだ。そう、戦争映画など美しく描いてはいけないのだ。お涙頂戴では駄目なのだ。この映画を見た人が「俺も軍に入って活躍したい」と思うだろうか?
おそらくそう思う人はほとんどいないだろう。
「こんな未来社会、間違っても来て欲しくない」
この映画は見終わったあと、それを感じるものなのだ。そう思わせることに成功した「スターシップ・トゥルーパーズ」はゆえに戦争映画としては見事なのである。
戦争映画の本当の傑作は戦争を格好良く描いてはいない。「ジョニーは戦場へ行った」「プラトーン」「プライベート・ライアン」、どれも戦争の惨さを前面に押し出している。これこそ戦争映画のあるべき姿なのだ。
戦争映画に涙はいらない。考えさせるテーマと、冷酷さ、そしてそれを見る者の怒りこそが必要なのだ。
「『火垂るの墓』は反戦映画ではない。あれは反戦にならない」
と主張している。
高畑氏の思想は宮崎駿監督に近く、左派寄りで反戦意識も強いのだが、なぜにこういう発言をしたのか? それは、戦争を可哀相なものに描いている、そのことこそ問題なのだという。
戦争の受けた傷が悲しい、というお涙頂戴映画では、権力者に、
「そういう目に遭わないために軍事力を増強する必要があるのだ」
と言わせてしまう。高畑氏はそう述べている。
ここで1997年のポール・バーホーベン監督作品「スターシップ・トゥルーパーズ」を題材にしたい。この映画は「宇宙の戦士」を原作にしたものであるが、戦争を徹底的に茶化している。そして戦争を徹底的に残酷に描いている。
舞台は未来の地球だ。昆虫型生命体「バグ」と星間戦争をしている設定になっている。
まずはこの地球の舞台設定がものすごい。完全なる軍事優先国家となっているのだ。そして社会の頂点に君臨するのは軍人ばかり、一般人は市民権すら与えられない。市民権が欲しければ「兵役」に就かなければならない。
個人の資質もあるが、まずは最前線の歩兵部隊に送られる。未来の世界で歩兵が必要か?という疑問はさておいて、敵の星でこの兵士達はバグと血みどろの戦闘を強要される。これがまたすさまじい。腕がちぎれ、首が飛び、身体が引き裂かれる残酷シーンがこれでもかとスクリーンに映し出されるのだ。
では若者達を戦場に送る社会がその後変わるか? いや、何も変わらない。それどころか無残としか言いようがない死屍累々たる戦闘を生き延びた主人公が英雄として祭りあげられラストを迎える。
そして映画では軍のCMが流される。入隊を勧誘するCMだ。そんな軍を賛美し、英雄を称え、そして無数の人が無残に殺される、そんな映画が「スターシップ・トゥルーパーズ」なのである。
公開当初、バーホーベンをよく知らない人達からは非難の声が上がった。
「なんて好戦的な映画」「こんな残酷な映画を公開するなんてどういう神経だ」「血の海で生き残ったから英雄だなんて酷すぎる」
だがこれこそが正しい見方なのだ。そう、戦争映画など美しく描いてはいけないのだ。お涙頂戴では駄目なのだ。この映画を見た人が「俺も軍に入って活躍したい」と思うだろうか?
おそらくそう思う人はほとんどいないだろう。
「こんな未来社会、間違っても来て欲しくない」
この映画は見終わったあと、それを感じるものなのだ。そう思わせることに成功した「スターシップ・トゥルーパーズ」はゆえに戦争映画としては見事なのである。
戦争映画の本当の傑作は戦争を格好良く描いてはいない。「ジョニーは戦場へ行った」「プラトーン」「プライベート・ライアン」、どれも戦争の惨さを前面に押し出している。これこそ戦争映画のあるべき姿なのだ。
戦争映画に涙はいらない。考えさせるテーマと、冷酷さ、そしてそれを見る者の怒りこそが必要なのだ。
by leftwing63
| 2015-08-18 01:48
| 戦争