休暇を2倍も多く取るアメリカには有給休暇法制はない |
これはもう弁解の余地がないほどに下手である。一応日本の法律では年次有給休暇は勤続6年以上でフルタイム労働なら20日認められており、企業サイドでは総合では平均的な有給休暇を19日付与しているのだが、日本人の平均取得日数は9日である。つまり付与日数の半分以下しか取得していないのだ。
日本とほぼ同レベルの取得日数なのは韓国だ。韓国経済は基本的に新自由主義であることを述べたが、そのためか付与日数は10日にしかならない。ただし、付与日数に対する有給休暇取得率では日本を上回ることになる。
では自由の国アメリカはどうだろう?
人々の行動が自由なら、企業活動も自由なこの国では、企業側の態度もビジネスライクに徹するようにも思えるし、また労働者側の要求も遠慮がないだろう。
実はアメリカの平均有給休暇取得日数は17日なのだ。ほぼ日本の2倍である。やはり自由の国と言っても、人権外交などを訴える国、市民の保護には国も力を入れている…と思ったら大間違いである。
なんとアメリカには「年次有給休暇の付与」という法的な義務は企業側に課せられていないのだ。驚くべきことに病気休暇も同じである。アメリカにはこうした制度は義務化されていないのである。先進国の中で有給休暇が義務付けられていないのはアメリカだけだ。
つまり企業側としては休暇を与える必要はなく、労働者が休んだらその分、給与から差し引いてもいいのである。しかし実際にはアメリカ人は有給休暇を17日と、日本の2倍も取っている。これはどうしたことか?
アメリカでは個人と企業間の契約には法は馴染まないと考える風潮が強い。つまり企業が労働環境整備の一環として年次有給休暇や病気有給休暇を法とは無縁に認めている。
アメリカ社会というのは権利と権利がガチのぶつかり合いで成り立っている、だから企業側がいくらビジネスライクに徹しようとも労働者側の意見も取り入れないと存続していけない社会なのだ。解雇規制などは緩いだろうが、反面、転職も容易だし、労働者側も条件の良い職場に遠慮なく移っていく。優秀な労働者を引き留めたいなら労働環境を整えるしかないのだ。
振り返って日本を見てみよう。
日本には最低保障として、最大20日間の有給休暇付与を企業に義務付ける法制度がある。しかし一向に休暇を取る人は増えない。1985年には休暇取得数が8日だったのに、それから30年たっても1日しか増えていない。
まず日本は企業側の意識として、有給休暇の取得に基本的には条件は必要でないことを徹底させるべきである。それと同時に、労働者側も妙に空気を読んだりせず、休みたい時は休むという姿勢を心がけるべきである。
フランスは有給休暇消化率100%に近いのに「まだ休みが少ない」との不満を述べる人が過半数である。ところが日本では47%の消化率しかないのに「休みは十分だ」と思っている人が過半数だ。労働者は奴隷ではない。まず労働者もその自覚を持つべきだ。
有給休暇制度が法整備もされていない国より、法規制もあるのに休暇取得が遅れている日本の労働環境はまさに社畜環境のモデルと言わざるを得ない。