医師や薬剤師はなぜ混合診療に反対する人が多いのか? |
「中国機が領空を飛んだら撃墜しろ」「竹島には自衛隊が攻め込んで占拠しろ」
など、過激というより後先を考えないお子様的な思想が痛いばかりであるが、こんなトンデモ院長がもうひとつ主張していることがある。
「混合診療なども解禁してバンバンやらせろ」
まず最初に定義をはっきりさせておきたい。
混合診療とは「健康保険のレセプトを通る医療と、それ以外の医療を混合して行うこと」である。費用負担としては保健医療分(通常3割)+保険外医療(全額自費)である。
そしてTPPではこの混合診療の解禁問題も話題になる。これを最も強く迫っているのはアメリカである。ご存じの通り、アメリカには公的な健康保険制度そのものがない。以前にも書いた通り、返り血を浴びない分野で自由化を迫る国家エゴがこの問題でも露出している。
現在日本では混合診療は禁止されている。これは健康保険の恩恵を受けつつ、金にものを言わせて特権的な医療を受けようとする行為が医療の平等性や安全性を損ねるからである。だから現在の保険外医療は、まだ安全性が確立していない未認可の治療法や、差額ベッドなどに限られる。
安全性の認められている薬と、そうでない薬が同時に使われる危険性を排除することを優先するためだ。
現在の保健医療が欠点のないものとは言わない。だがそれらの是正は保健医療の中で成されるべきもので、保健医療のほかにも保険外医療を平行して行うこととはまた別の問題である。
医師にとっては収入の元が患者の財布から出るか、健康保険組合から出るかの違いだけで、混合診療にしようがしまいが金銭的には関係ない。よって「混合診療の禁止は医師の既得権保護」などと主張する一部の自称エコノミストどもの理屈は通らない。
むしろ医師が問題としているのは「混合診療を全面解禁すれば、将来的には保険診療は縮小される」恐れが強い面である。自称エコノミストどもは事実「混合診療を解禁すれば、保険診療を縮小できて、財政が健全化する」と述べているのである。
高収入の自称エコノミストや高須院長などには痛くもかゆくもない出費だろうが、一般市民にとっては保険適用の縮小は脅威となる。
ここで先の高須院長の発言に戻る。
なぜほとんどの医師が混合診療に反対する中で、高須クリニックはこれに賛成するのか?
それは高須クリニックが「美容外科」だからである。美容外科にも保険が適用されるケースはあるが、それは日常生活に支障を来す場合のみであり、ほとんどのケースは保険の適用外なのだ。だからこそこんな無責任なことが言えるのである。
お子様な戦争ゴッコを唱えるようなネトウヨ・ネオリベ無責任男に耳を貸す必要はない。必要なのは弱者が安心して医療を受けることができる制度を維持することだ。
以下のレポートも参考にされたい。
混合診療に関する一考察 ― 先進諸国の状況を参考に ― (松原 由美)
http://www.myilw.co.jp/life/publication/quartly/pdf/79_06.pdf