世論調査の脆弱性と国民意見のデタラメ |
ここで各新聞社の安保法制の賛成:反対の比率をあげる。
朝日 賛成26% 反対56%(32:68)
毎日 賛成29% 反対58%(33:67)
共同 賛成28% 反対59%(32:68)
NHK 賛成32% 反対61%(34:66)
読売 賛成36% 反対50%(40:60)
産経 賛成49% 反対44%(53:47)
産経だけがなにやら別の世界の世論調査をしているような数字である。他の報道機関の調査がほとんど数字に差がないのだから、これが真の数字と言っていいのだろう。読売も他の機関に比べると賛成がやや多めである。両紙とも「右翼的な」新聞である。
これで明らかに言えることは「右翼的な新聞は安保法制賛成の数字を大きく出す」ということだ。
一方「左寄り」とされる朝日や毎日だが、NHKや共同通信の数字と大差ないことで「左翼的な新聞は安保法制反対の数字を大きく出す」という傾向は見られないことがわかる。
これは読売と産経は「中間的選択肢」と呼ばれる、どちらにでも取れるが、新聞社の思想に合わせて賛成意見に組み入れられる、そのような選択肢が入っているためだ。読売と産経には「必要最小限度で使えるようにすべき」という無関心派が選びそうな選択肢が盛り込まれているのだ。
一方、他の機関の選択肢には「賛成・反対」のふたつしかない。
世論というのはいい加減なもので、一方の問題では賛成が過半数を占めているのに、それと矛盾する一方の問題も過半数を占める場合がある。
たとえば18歳選挙権に関しては(前述の調査のこともあり、読売と産経の数字はあてにしない。ここでは朝日の数字を用いる)、今年3月の世論調査で「賛成48%、反対39%」という数字が出ている。おそらく18歳飲酒喫煙ともなるとさらに反対が多くなるだろう。
ところが一方で、少年法の対象年齢については18歳未満に引き下げることに「賛成81% 反対11%」という数字が出ているのだ。
こんな馬鹿な話はない。
「少年法改正だ! 少年犯罪にも厳罰を!」と叫ぶのなら、成人の権利を18歳以上にすべて与えなければ理屈が通らない。自分たちの気に入らないことは大人扱いで厳罰にしろ、だが選挙権や酒タバコに関しては子供扱いだなど、まさに身勝手な論理である(そもそも少年法は子供を甘やかす法律ではない。このことはいずれ述べるとする)。
選挙権の18歳引き下げに反対の理由の7割は「判断力が十分でないから」であるが、それなら犯罪行為に関しても「判断力が十分でない」という理屈が通るはずである。
よって世論調査というのは調査機関の誘導によっていくらでも変えられてしまうものであり、調査される側も相矛盾する身勝手な意見を平気で口にするといういい加減なものであることをよく把握するべきなのだ。