さてロシアの抗議に日本政府はどう出る? |
「ロシアは日本に対し、登録の申請を行わないよう働きかけたにもかかわわらず申請が行われた。日本は2国間で解決すべき政治問題をユネスコに持ち込んだ」
「日本が記憶遺産を政治利用している」
これとそっくりな主張をどこかで聞いたのではないだろうか?
そう同じく記憶遺産として認定された「南京事件」である。
中国が「南京事件」を記憶遺産として申請したのが認められたことに対して、日本側は「2国間で解決すべき問題を政治利用している」と反対したのだ。そしてユネスコの政治的中立性にも批判を加えた。
これは日本にとっては困ったことになった。というのはロシアは南京事件の記憶遺産登録に関しては、日本側の見解に理解を示しているからである。ロシアはこのように述べている。
「中国国民の悲劇は理解できるが、同じようなことは多くの国にあり、2国間で解決すべきだ」
まさに日本が主張していることをロシアに言われてしまった。それも「シベリア抑留」認定に反対の立場とセットで、である。
ロシアによる南京事件に関しての立場表明に関しては歓迎するが、シベリア抑留の認定については日本側だけの言い分が正しいなどといえば完全なダブルスタンダードになってしまう。これについて日本側は申請の際に問題になりそうだとは思わなかったのだろうか?
私は南京事件認定に反発するのなら、シベリア抑留は反発を受けるのではないか、とすぐに想像したものだ。
ユネスコが記憶遺産認定を密室協議で行っているのは事実らしい。そうなると被害国だけの言い分が一方的に通ることになる。刑事裁判でも加害者側にも言い分はあるだろうから、必ずそちらの釈明も聞く。やはり欠席裁判は良くないとは思う。
南京事件もシベリア抑留も、当事国同士が認めるところは認め合って認定にこぎつければ、このようなトラブルには発展しなかっただろう。日本政府も南京事件の死者数などには異論があるが、事件そのものの存在は認めているからである。
ただ日本政府の「ユネスコへの拠出金を停止する、減額する」などという反応は正直言って情けない。おおよそ大人の取る態度ではない。こうした面に、国際社会からの目に無頓着な安倍政権の未熟ぶり、ガラパゴスぶりが露呈しているのだ。
ユネスコは日本が国連復帰を許されなかった時代にも日本を受け入れてくれた組織だ。パレスチナを認知することでアメリカと敵対しているが、人道的立場からは決して引かない組織でもある。国の勝手な価値観でユネスコを敵に回すようなことは決して日本にとって利にはならない。