ユニオン・ショップ制はなぜ歪んでしまったか? |
労働組合が組織率50%を超えた時、全従業員を労働組合に参加させることができるとする制度がユニオン・ショップ制(ユシ制と略される場合もある)である。もちろん、企業利益代表者である一部管理職は除く。つまり取締役、社長、人事管理職などは除外される。
日本では憲法で「結社の自由」を規定している。この自由はもちろん結社に参加しない自由も含んでいる。一方、労働組合に関しては「団結権」を認めている。
「結社に加わらない自由」と「労働者の団結権」のどちらを優先するか、という面において、日本では「団結権」を優先した。よって全社員一丸となって会社から権利を勝ち取ろうという制度が作られた。これがユニオン・ショップ制である。
ユニオン・ショップ制は労働者の権利向上を目的とした制度であったことがわかる。
ところがこの制度には問題点もあり、「では労働者が組合を抜け出たいと言ったときどうするか?」ということである。
これについては「解雇しても良い」ことになっている。自動的に解雇する場合もあるし、雇用者が選択的に解雇するケースもある。
先に労働組合が上部組織のトップダウン方式で運営されることを述べた。これは「労働貴族」とか「組合貴族」などといわれる一握りの幹部組合員の思うがままに組合が運営されることを意味する。
ここに目をつけたのが企業側である。ユニオン・ショップ制を利用し、社員を思うがままに操ろうとするのである。一部の幹部組合員さえ破格の待遇を与えて手懐けておけばそこから先は容易である。なにせ組合に異を唱えればクビにできるのであるから便利である。本来なら労働者の味方になるはずの組合が敵に回ってしまう。労使双方から攻撃されるのだ。
こうしてユニオン・ショップ制は当初の理念はどこへやら、たちまち御用組合の温床となってしまった。こうなってしまうと労働者からすると、組合などないほうがマシ、ということにもなりかねない。
海外にはユニオン・ショップ制を禁止している国や地域もある。日本と比べて労働者の権利意識が強い海外でも、似たようなケースを懸念していることが理解できるであろう。
近年ではユニオン・ショップから脱退した場合、別の組合に所属する場合は解雇権は生じないとする解釈が広がった。またユニオン・ショップ制自体の違憲性を問う声も強くなっている。特に日本の組合は前にも述べたように体育会系の序列が強く、「口先左翼の体質右翼」と呼ばれやすい傾向を持っている。そのためユニオン・ショップの御用組合化も起きやすい。
さらに危険なのはこうした組合制度を支持母体としている政党が選挙の際に自民党から「ユニオン・ショップ制は憲法違反だ」と言われたらどう反論するのか、という面もある。
個人的にはユニオン・ショップ制は廃止すべきと考える。労務管理に利用される組合など、もはや労働者の味方ではない。