2016年 02月 23日
国家社会主義体制は労働者をどう扱ったか? |
現在の日本は市場経済によって動く基本自由経済主義である。これは冷戦時代の東側の統制経済とは異なる。
では戦時中はどうだったのか? 日本の戦時中に「自由主義経済」などという言葉があるはずもない。当然、当時は統制経済である。だがそれらは現在左派が主張している社会主義思想とは言葉以外は何も似ていない「国家社会主義」であった。国家内だけで完結してしまう社会主義とも言える。
ナチスの政党も「国家社会主義ドイツ労働者党」、名前だけからするとなんとなく左翼っぽい。だがナチスは共産主義者や社会主義者を弾圧した。これはなぜか? それはあくまでも経済が「国家」のためでしかなかったからである。
日本の例で言うと、戦争が激しくなるにつれ、統制経済はますます強まり、国家社会主義色を増す。だが一方で、肝心の左派的な社会主義の規範、労働者保護という観点からはどんどんかけ離れていったのだ。
「日本長期統計総覧」によると工場労働者の労働時間は1923年から43年にかけては10時間台、44年に入ると11時間台にまで増加している。休日の数は月平均2~3日という少なさである。
一橋大学森口千晶教授によると、1930年代には全国民の所得の2割を、上位1%の国民が占めていた。現在の日本は格差が拡大し続けているとはいえ、それでも上位1%の国民が占める所得は9%前後に過ぎないため、当時は大変な格差社会だったと言える。
つまり統制経済のはずの日本で、労働者を取り巻く環境はおおよそ左翼的とは言えなかったわけだ。
それでも国民の不満は高まらなかった。いや一部では「戦争に負けろ。さうすれば貧乏人も食ってゆける世の中がくる。いまにロシヤからも飛行機が飛んでくる」と世の中に噂を流し、官憲が躍起になって打ち消しに回るという光景も見られたようだが、国民全体には諦めというか、逆らっても仕方ないという空気が充満していたようだ。
ひとつは徴兵制である。当時の徴兵は富裕層、貧困層関係なく選抜された。これが国民にとって、ひとつのガス抜きになっていたというのである。情けない話だが、ある種のルサンチマンを満足させることでしか不満を解消できなかったとも言えた。
今後、日本で戦前型の徴兵制が敷かれるというのはさすがに考えにくい。そこで心配されるのが「経済的徴兵制」というものである。安全で安定した企業に就職できなかった者は、軍需にたずさわる仕事に就かざるを得なくなり、戦地への赴任など、実質的な徴兵制になるのではないかという不安である。社員は弱い立場だ。業務命令と言われたら行くしかない。
こうして社会の中に浸潤していく形で労働者保護は軽視され、気がついたら戦地への赴任は普通のことだった、などという労働条件にならないよう十分警戒をしなくてはならない。
では戦時中はどうだったのか? 日本の戦時中に「自由主義経済」などという言葉があるはずもない。当然、当時は統制経済である。だがそれらは現在左派が主張している社会主義思想とは言葉以外は何も似ていない「国家社会主義」であった。国家内だけで完結してしまう社会主義とも言える。
ナチスの政党も「国家社会主義ドイツ労働者党」、名前だけからするとなんとなく左翼っぽい。だがナチスは共産主義者や社会主義者を弾圧した。これはなぜか? それはあくまでも経済が「国家」のためでしかなかったからである。
日本の例で言うと、戦争が激しくなるにつれ、統制経済はますます強まり、国家社会主義色を増す。だが一方で、肝心の左派的な社会主義の規範、労働者保護という観点からはどんどんかけ離れていったのだ。
「日本長期統計総覧」によると工場労働者の労働時間は1923年から43年にかけては10時間台、44年に入ると11時間台にまで増加している。休日の数は月平均2~3日という少なさである。
一橋大学森口千晶教授によると、1930年代には全国民の所得の2割を、上位1%の国民が占めていた。現在の日本は格差が拡大し続けているとはいえ、それでも上位1%の国民が占める所得は9%前後に過ぎないため、当時は大変な格差社会だったと言える。
つまり統制経済のはずの日本で、労働者を取り巻く環境はおおよそ左翼的とは言えなかったわけだ。
それでも国民の不満は高まらなかった。いや一部では「戦争に負けろ。さうすれば貧乏人も食ってゆける世の中がくる。いまにロシヤからも飛行機が飛んでくる」と世の中に噂を流し、官憲が躍起になって打ち消しに回るという光景も見られたようだが、国民全体には諦めというか、逆らっても仕方ないという空気が充満していたようだ。
ひとつは徴兵制である。当時の徴兵は富裕層、貧困層関係なく選抜された。これが国民にとって、ひとつのガス抜きになっていたというのである。情けない話だが、ある種のルサンチマンを満足させることでしか不満を解消できなかったとも言えた。
今後、日本で戦前型の徴兵制が敷かれるというのはさすがに考えにくい。そこで心配されるのが「経済的徴兵制」というものである。安全で安定した企業に就職できなかった者は、軍需にたずさわる仕事に就かざるを得なくなり、戦地への赴任など、実質的な徴兵制になるのではないかという不安である。社員は弱い立場だ。業務命令と言われたら行くしかない。
こうして社会の中に浸潤していく形で労働者保護は軽視され、気がついたら戦地への赴任は普通のことだった、などという労働条件にならないよう十分警戒をしなくてはならない。
by leftwing63
| 2016-02-23 09:00
| 社会(労働・福祉)