「シルバーデモクラシー」こそ日本の防壁 |
野党共闘もそれなりに結果は出したが、そもそも土台があまりにも与党に有利になりすぎている。地盤然り、選挙制度然り、報道然り…。
「大阪都」が住民投票で否決された時は、肯定的な票が多かった若者の代弁者のふりをして、ネオリベ系言論人がこぞって「大阪は若者の声が反映されていない。シルバーデモクラシーだ」と声を荒げて罵ったのを覚えている。自分達が勝った時は「国民の声だ!」と居丈高になるくせに、負けると「高齢者のせいだ!」と罵倒する様は見苦しいの一語に尽きる。
だが世論調査の際には若者は否定派が多かったのだ。肯定的な票が多かったのは、肯定派がより積極的に投票行動に移したからにほかならない。
今回の参院選においても不思議な傾向が現れている。
若者に自民支持が多く、時事通信の出口調査によると40.1%にもなったそうだ。これは比例区の総得票率35.9%を上回る。この傾向は以前から言われていたことで、若者の安倍政権支持率は高かったのだ。一方40~50代では政権支持率は底を打つ。
ところがニコニコ動画のアンケートによると、年代別政権支持率はまったく逆の傾向を示す。ニコニコの調査では若者の安倍不支持は支持を大きく上回り、逆に50代以上では支持が不支持の倍以上になる。
そこでニコニコというメディアの特徴を考えてみよう。一般に言われているように、ニコニコユーザーにはネトウヨが多い。動画を見ていてもヘイトスピーチの氾濫に腹が立ってコメントを消してしまいたくなるほどだ。
ここでネトウヨは40~50代に多いといわれる。ということは…だ。一般社会とは違い、「政治意識高い系」がニコニコには多いのではないかと思われる。良い面も悪い面も含めてだ。
つまり、どういう形に置いてさえ、「意識高い系」はそれぞれ、20代においても50代においても少数派に属するのではないかということが考えられるのだ。50代はネトウヨは多いが、それはノイジーマイノリティであり、多数は緩やかなリベラル支持に向かい、逆に10~20代はSEALDsなどのように意識の高いリベラルは少数で、多数派は緩やかな保守思想なのだろう。
だがネトウヨ化しない穏健保守思想であろうと、「チョンを殺せ」と叫ぶヘイト右翼であろうと、一票は一票だ。ともに同じ重みで自公の一票となるのだ。
となると、穏健保守の若者層は、自公にとってありがたい票田となる。逆にいくらネトウヨという害虫がいようと、革新系の年配層は野党にとって重要な票田となるのだ。
そう考えれば、日本の現状がぎりぎりのところで極右の暴走を止めているのは、まさに穏健リベラルな「シルバーデモクラシー」なのかも知れない。
それにしてもイギリスのコービン、アメリカのサンダースと、リベラル系の候補が若者の支持を集めている中で、とても恵まれているとは思えない日本の若者が安倍政権を支持する、それも「なんとなく」。これは実に不思議な国民性と言わざるを得ない。