日本脳炎接種時期を早めるのは大丈夫か? |
日本脳炎の患者数は1960年代には年平均1,000人から2,000人のペースで推移していたが、衛生環境の改善や予防接種の普及などで患者は激減し、現在では年間数名の患者しか出ていない。予防接種の効果がはっきり出た感染症のひとつといえるだろう。
そんな日本脳炎であるが、日本小児科学会はリスクの高い地域では通常3歳で受ける接種を、6ヶ月に早めようとの呼びかけを行っている。
その理由となったのは2011年に沖縄で、2015年に千葉県で、それぞれ乳児が日本脳炎を発症したためである。
しかし日本脳炎ワクチンは副作用も存在する。大半は軽い症状ですむが、時には脳症など重篤な症状に進む場合もある。
2012年には日本脳炎ワクチン接種後に2人が死亡した。この時には接種との因果関係が証明されないまま、「別の原因で死亡した」ということにされてしまったが、科学者はこうした場合、「因果関係がわからない」を「因果関係がない」にすり替えるケースがままあるので、この2件の事例でも発表はあまり信用はおけない。
となるとワクチン接種はあくまでも、ワクチンによる正の効果>ワクチンによる負の効果、がはっきりしているケースに限られるべきだ。
数年に一度、乳児が発症したからといって、それが死亡事故の疑いまであるワクチン接種の対象年齢の引き下げに走るまでの価値があるか、ということである。
ワクチン接種には年齢制限がある。安全に、そして効果的にワクチンの利用ができるようには、日本脳炎の場合、3歳が妥当とされたのだ。だから現在の3歳という基準は、効果と危険性のバランスを考えたうえで、最もワクチンの効果が安全に期待できるということなのだ。
それを下げるということは、年齢低下による危険性が増すことになる。はたして年齢制限を下げて、もしそれで副作用が増加しても、それでも数年に一例というわずかな発症者抑制がまさる効果になるといえるだろうか?
あとは費用の問題だ。6ヶ月が基準とされてしまうと「私は危険を回避するために3歳にしてほしい」という人を任意接種扱いとしてしまい、自己負担となってしまうこともあり得る。これに対する解決も必要だろう。
ことは拙速に運ぶべきではない。