株というものの御せない怪物性 |
それも大統領選前のレベルに戻ったのではなく、それをはるかに超えるほどの株高になっているのだ。理由はトランプ新大統領への期待感だという。
これまで市場というのは保護主義の動きが出るとそれを嫌気する指向が強かった。そして当のトランプはアメリカファーストを主張し、今後のアメリカ保護主義を打ち出すことをためらっていない。暴言はすっかり影を潜めたトランプだが、TPPからは離脱を示し、経済方針では大統領選の最中から主張はまったく変わっていないのだ。
それでもトランプに期待が大きいのはおそらく、
「トランプなら何かやってくれそうだ」
という漠然とした期待感があるからだろう。それが何かはわからないが、とにかく「何か変えてくれそうだ」という、一種のトランプ・ハイともいえる心理状態である。だがこうして記事を書いている現在から数ヶ月後にどんな記事を書く羽目になるのかわからない。つまり現在のトランプ・ハイはそれほど曖昧で危ういものなのだ。
株を扱っている者は企業の内容に精通しているのかというとまったくの間違いである。
拙ブログでもしばしば話題に上げたポケモンGOについて見てみよう。
ポケモンGOが配信された7月前半に任天堂株は爆発的に上昇した。しかし任天堂側から「当社への影響は限定的」とコメントが発せられると、今度は潮が引くように値も下げた。いったいこの熱しやすく冷めやすい性質はなんなのか?
ゲーム好きの人なら常識だが、ポケモンというIPを考えたのは確かに任天堂である。そしてゲームフリークという会社にゲームの制作を依頼した。当初は任天堂のブランドで売られていたが、21世紀に入ってポケモンは独立する。
現在ポケモンの営業を行っているのは株式会社ポケモンである。任天堂は株式会社ポケモンの大株主ではあるが、実質的なマネジメントは行っていない。
そしてポケモンGOを開発したのはナイアンテック社である。つまりポケモンGOはナイアンテック社と株式会社ポケモンの共同開発なのだ。
それなのに「ポケモンといえば任天堂」と思い込んだ人が株に殺到したのだ。そこで誤解を解くためにも任天堂は「当社への影響は限定的」と発表したのだ。
株を扱っている人はそんなマニアが知っていそうなことすら知らないのだ。そういう人が動かす株の市場というのは動きが読めない。わけのわからないものへ勝手に期待をふくらますこともある、そのひとつがトランプ・ハイなのかも知れない。
そして経済学は正確にいえば「経済解釈学」である。リチャード・ファインマンの「経済学など似非科学の領域だ」発言は間違った発言ではなかろう。