ポピュリズムにもお国柄 |
リベラル勢力の中には「右傾化」とだけ語っている向きもあるが、それで片付けたら本質を見誤るだろう。今のポピュリズムはそんな右翼とか左翼とかで語れるほど単純な構図ではない。
まずはイギリスのEU脱退である。以前にも拙ブログでは、イギリスは難民や雇用の問題以外に、大英帝国のプライドを捨てられないという面があることを述べた。イギリスは国土が小さくても大国でいたいのだ。
リーマンショックで一時的に落ち込んだが、イギリス経済は緩やかな上昇傾向にある。だから経済だけではEU脱退は語れない。
そしてトランプ次期大統領の当選。これには白人の隠れトランプ支持派が大きく影響したと言われている。人種差別を撤廃することは、すなわち白人層からすると別人種を優遇しているように見える。白人層は彼らを既得権と見なした。大半の有名人はヒラリーを推していたが、これも裕福な立場だから言えることだと断じたのだ。
ここにもアメリカファーストなアメリカ人の本音が見て取れる。
そしてフィリピンのドゥテルテ大統領。彼は右翼ではない。長年のつきあいからか共産ゲリラとも懇意にしており、政策内容はむしろ左翼的だ。
彼は犯罪撲滅のためには暗殺も認めるなどの過激な方針をとっている。犯罪者のみならず、巻き込まれて千人単位の無実の人も死んでいるそうだが、冤罪ひとつが出ても大きな批判がわき起こる日本とは違い、フィリピンはアバウトだ。批判らしい批判は表に出ない。そして高支持率だ。
フランス国民戦線のル・ペンも人気だ。彼も移民政策への反対とEU脱退を公言しており、ひたすら内向きな政策を掲げている。
フランスはイギリスと違いここ数年経済が停滞している。そういう意味ではアメリカと似ている。フランスファーストの極右政党に人気が出るのもそうした理由だろう。
韓国もポピュリズム政治家が支持を集めている。城南市の李在明市長がそうだ。彼は労働階級の出身であり、北朝鮮とも融和政策を主張している。そして朴槿恵の身柄拘束を訴える。
少々気になるのが日本に批判的なことだ。だがトランプもそうだったように、いざとなればこれは態度を変える公算はあるが、少なくとも李市長も右翼ではない。
すでに李市長は世論調査で次期大統領の人気3位に上がっているらしい。
こうしてみると、世界のポピュリズムは、いかにもその国のナショナリズムや社会問題から見ると最適化されたような主張によってできあがっていることがわかる。
だからこうした強硬な発言、暴言で支持を集める政治家は右左の思想とは関係なく現れるのだ。小泉、橋下、河村が、いかにも市民の意見を代表するかのように装って世に出たように。