米国にロシアの選挙介入を批判する資格があるのか? |
だがオバマ氏が拳を振りあげて怒るほど米国はこれまでまともなことをしてきたのか?
過去の歴史をみると米国の他国選挙・政権への暗黒の介入が山のように噴出するのだ。ここでは価値観が現在と変わりがないとされる第二次大戦後だけに絞って見ていこう。
まずなんといっても米国を70年代に揺るがしたイラン危機は米国の介入に端を発する。
1953年にCIAはイランのモサデク政権転覆を謀り、傀儡のパーレビを国王に据えた。これはイラン国民の反米感情を掻き立て、パーレビは米国に亡命する。怒りが収まらないイランの民族過激派は1979年の米国大使館の占拠事件を引き起こす。
1954年にはベトナムの国民選挙にCIAが介入し不正を行って元首を退陣させ、その後は傀儡大統領ゴ・ディン・ジェムをその座につけた。
1961年にはキューバのカストロ政権打倒を目論み、CIAは暗殺計画を実施した(ピッグス湾事件)が失敗に終わる。このことが米国とキューバの長い国交断絶に繋がりキューバにソ連が接近して1962年のキューバ危機の遠因となる。
また中南米での民主勢力や社会主義勢力の伸長に伴い、米国はCIAを介して露骨な妨害戦術に出る。
ブラジルは戦後、民主的手法により政権が維持してきたが、1964年に米国の支援を受けたブランコ将軍がクーデターにより政権を掌握するとその後10年にわたり独裁制の圧政を敷いた。ブラジルが米国の介入から脱し、再び民主的な政権を手にしたのは実に1985年のことである。
これを手本とする形でアルゼンチンやチリでは軍政が跋扈し、長らく南米の左派弾圧の歴史となった。
他にも直接的・間接的に米国が関与した政権や選挙への妨害は掃いて捨てるほどもあり、しかもその結果、人権外交を唱える米国の姿とはまったく違う、民主勢力への弾圧、独裁、内戦、国際間対立の激化、全面核戦争への危機などとろくな結果を残していない。もちろん旧ソ連も同様のことをしているが、それが米国の免罪に繋がるものではない。
これら米国の過去のすさまじいばかりの悪行の数々を見てくると、今さらなにが「ロシアが選挙に介入した、けしからん」などと言えるのか?
米国は自分の歴史をもっと直視すべきである。その醜い歴史とも対峙すべきなのだ。