報道の自由度72位には報道の自縛も含んでいる |
彼らの評価基準は多分に西側寄りで、多様な価値観の民族・宗教を擁する国の立場には理解が浅いからだ(たとえばムスリムが多いロシア)。
とはいえ、西側と価値観を共有すると主張している日本にとってはこの報道の自由度は高くなくては理屈に合わない。
そのランクが72位とG7の中で最低を記録したことはどういうことか、と言わざるを得ない。
国境なき記者団の指摘はいちいちもっともなことばかりだ。
記者クラブが公益を損ない、民主主義の監視者としての役割の障害となっていること。政府による政権批判的な報道への敵視。SNSでの民族主義者の挙動(いわゆるネトウヨの荒らし)。特定秘密保護法の危険性など。
そしてタイトルには「The threat from Shinzo Abe」とある。
「安倍晋三による脅威」という意味だが、リベラル系ジャーナリズムが指摘していることは、この報告書でも見事なまでに取り上げられている。
現在日本はふたつの方向から報道の自由が脅かされている。
ひとつは権力による直接的な圧力である。NHKやテレビ朝日が圧力を受けたことは知られているが、「報道の公平性」を盾に、政府に肯定的な報道を要求してくる姿勢だ。
つるの剛士が「安保法に反対の意見ばかりではなくて、賛成の意見も聞きたい」などと妄言をほざいたが、そんなものは読売・産経を読めばすぐに見つかる。つるのは「反対の意見など書くな」と言っているのだ。
こうした様々な形態の圧力が報道を委縮させていることは確かだ。
もうひとつが「忖度」である。
今、流行語大賞を決めるなら「忖度」が選出されることは間違いない。それほど政権の顔色をうかがい、政権批判を自分から封じる動きだ。
途上国で報道の自由が低い国では、自由を得るために報道関係者は戦っている。日本はそこまで弾圧されているわけでもないのに自分から膝を折ってしまっているのだ。
日本というのは海外から開国を迫られ仕方なく開国した。戦争に負けて連合国側から迫られ仕方なく民主化した。自ら自由を勝ち取った経験がない。これが報道が自粛し、空気を読み、忖度する原因なのだろうか?
ちなみにこのニュース、読売と産経では読んだ記憶がない。