軍事的緊張を支持率アップの好機とするのは邪道だ |
「ギャラップコリア社」の8月25日から27日の調査によると、朴大統領の支持率は49%まで回復したという。一方不支持率は44%と支持を下回った。
この原因は北朝鮮との軍事的緊張に端を発する問題で、北朝鮮側から一定の譲歩のコメントを引き出したためと韓国メディアは解析しているようだ。
だがちょっと待って欲しい。軍事的緊張など始めからないほうがいいのである。それがあったからこその朴大統領の行動があり、そのための支持率アップだとしたらちょっと考えてしまう。
つまり意図的にでも軍事的対立を煽り、それがたとえ敵対国との出来レースだとしても、いや陰謀論的に言えば、互いにしめし合って軍事的対立を作り上げ、それが双方の権力者の支持率アップで万々歳…ということも可能になるのだ。
もちろん今回の緊張は北朝鮮側の非武装地帯での地雷敷設などがきっかけで、危機を作り上げたのは北朝鮮側であることは承知している。
とはいえ、セウォル号事故の対応やMERS問題対応などで遅れを取った朴政権にとって、まさに絶妙のタイミングで軍事的緊張が高まってくれたということはまぎれもない事実だ。
2001年の9・11テロにより、それまで支持率の低下に悩んでいたブッシュ前大統領が突如として息を吹き返し、テロ対策としての軍事行動にアメリカ国民が諸手を挙げて賛成し、喝采を送ったことを覚えている。
これについては翌年2月のソルトレイクシティの冬季五輪までもが政治的に利用された。世界貿易センタービルに掲示されていた、焼け焦げた星条旗をパレードに持ち込んで、アメリカ国民の愛国心を掻き立てたのも、まさに軍事的危機の政治利用の一環だ。
この行為はさすがに様々な方面から批判が湧き出た。明らかにスポーツの祭典を政治的プロパガンダに利用していたからだ。
この頃のテロ組織はアメリカだけを標的にしていたわけではなかったが、アメリカが特に大きな被害を受けたため、アメリカ国内では熱狂的な支持を受けた。しかし少しでも温度差のある国からは批判が出たのである。
軍事的緊張の元で国民の意識がハイになり、時の権力者を、それも強硬論をぶち上げる権力者を大声で支持するのは先進国でも変わらなかったことをこの時代のアメリカは証明した。
今、アメリカはイラク戦争への批判など、あの熱病にうなされた時代に対して相当に冷めた目を持つに至っている。軍事的緊張による支持というのはそんなもので、日本の太平洋戦争も同じだが、あとから考えると、
「なぜ、あの時はそんなに熱狂的に支持したのだろう?」
と思うことが多々ある。
人類も成長しているのだから、そろそろ軍事的緊張で権力者の支持を押し上げるような行為は避けるべきではないか。そんな時こそ冷静な目を持って対処する、そんな国民でありたいものである。